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ワケあり明前西湖龍井2015年

どうしてそんな茶葉をアップで撮影してアップするのかと中国茶を知っている人からは怒られてしまうかもしれませんが、
題名のとおり「ワケあり」龍井茶です。
いや、ワケありもなにも、そもそも市場で手に入る龍井茶は大半がはじめからワケありなのではないかと言い募る人もいるかと思いますが、これは間違いなくワケありの茶葉なので、わざわざ「ワケあり」を名乗るが正直で正統だろうと思います。

前回紅茶のことを書いた後にやはり春の香りが恋しくなってしまい、杭州西湖区のさる茶農家さんから画像の茶葉を送っていただきました。
別に正真正銘の明前西湖龍井(のワケあり)ということを意識しなくとも、届くや否や封を切った瞬間の芳ばしい香りに一目惚れならぬ一嗅惚れしてしまい、「もうこれでいいだろう、今年の緑茶は」と妙に独りごちて小躍りをしたい気分になってしまいました。

どちらかというと日本人にとって中国の緑茶はとっつきにくいのですが、それは日本が緑茶文化で、スーパーの千円の煎茶(洒落ではありません)がもう充分に美味しいというのも関係しているかもしれません。
もちろん清涼飲料水やティーバッグの原材料として中国の緑茶(いわゆる茎茶)も日本に大量に輸入されてはいるのですが、中国で一般に販売されている緑茶とは異なります。
日本の緑茶と中国の一般の緑茶で括目すべきは製法の違いで、日本の緑茶は蒸して熱を入れるのですが、中国の緑茶は「炒青」という炒る製法で熱を入れて発酵を止めます。
この製法の違いは味や香りの違いにもなり(いい喩えではないかもしれませんが、茶碗蒸しをフライパンでつくることはできないという当たり前のシーンを想像してみてください)、中国の緑茶には煎茶のような舌の上で綺麗にまとまるある種の洗練さが欠落しています。
一口啜ると「これは茶ではなく、もしや草では、、」などと訝るくらいに自然そのままの荒々しい(というか生々しい)茶葉もあります。

しかし、龍井茶は、とっつきにくい中国緑茶の中では比較的なじみやすいほうなのではないでしょうか。
英語圏で緑茶というとこの龍井茶(Dragon Well Tea 文字通りの「龍の井戸の茶」)が筆頭にリストされることが多く、
それは名前にドラゴンがついているのでオリエンタリズムを掻き立てるという面もあるのでしょうが、
それ以上に、やはり外国人が実際に飲んでみて普通に美味しいと感じられる普遍性のようなものがあるからだと思います。

日本で通販をしている時によく「上海旅行のおみやげで西湖龍井茶というお茶をもらったのだけど、その値段を教えてほしい」というお問い合わせをいただきましたが、これにはなんとも説明のしようがなく、答えに窮してしまうことがありました。
パッケージに書かれている漢字(店の名や会社名)を日本語の読みで伝えてくれるのですが、それを聞いても値が分かろうはずもなく、いい加減なことも言えないので、
「いや、すみません、よくわからないです」と答えました。
「だいたい高いのがいくらくらいとかでいいから教えてよ」
「いや、その高いやつがよくわからないんですよ」
「でも相場ってものがあるでしょ」
「その相場がめちゃくちゃなんです」
「あなたお茶屋なのにそのくらいもわからないの」
「ところで、その龍井茶、美味しいですか」
「まあ、美味しいわね」
「じゃあ、めでたいことじゃないですか」
などという会話も記憶の断片にあるのですが、要はおみやげの龍井茶も普通に飲んで普通に美味しいものがあるということです。

西湖龍井は摘み取った日の夜に製茶師が手で釜で炒るのですが、その釜入りの過程で非常に芳しい香りが生まれます。
掌の茶葉の香りを嗅いでいると思わずぱりぱりと茶葉を齧ってしまいたくなるくらいの芳ばしさです。
本来はこの香りや味わいで茶の真価が決まるべきなのですが、マーケットではどの茶畑のどの時期のものかが重視されており、
毎年予約ですべて捌かれるブランド畑の茶葉がはたしてどこまで価格相応なのかは疑問です。
同じ畑の茶葉を同じ人間が製茶しても、決して同じお茶にはならないからです。

ただ時期というのは重要で、やはり早春に摘む芯芽のほうが美味しいのは確からしいと考えています。
分析したわけではないのですが、冬の寒さを耐え育ったはじめの茶葉にはなにか成分的に違うものがあるのかもしれません。

今回は3月23日摘みの龍井茶を茶農家さんからいただいたのですが、これは製茶の過程で茶葉の形が崩れてしまったものです。
ワケありと言ったのはそのためで、うっかけ煎餅のようなものです。

また、画像の中にいくつか玉のようなものが見えますが、芽の表面の毫毛が集まって丸くなったものです。

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