「茶経」の茶器 風炉1

「茶経」の茶器 風炉1

陸羽の「茶経」を読む、第9回目です。

今回は、茶器の風炉(ふろ/ふうろ)についてです。

該当の箇所の前半を引用いたします。

「風炉(灰うけ)

風炉は銅や鉄を鋳造してつくる。昔の鼎(かなえ)の形のようで、厚みは三分、

縁の広さは九分、炉の中は空洞で厚みは六分、そこには、こてで土が塗りつけてある。

炉には三足があり、古体の文字で二十一字書いてある。

一足には『坎(かん)が上に、巽(そん)が下に、离(り)が中に』とある。

一足には『体は五行を均しくし、百疾を去る』とある。

一足には『聖唐が胡を滅ぼした明年に鋳る』とある。

その三足の間に三個の窓があり、底に一個の窓があり、

そこは通風と燃えかすを落とすところとした。」

(引用元:布目潮渢「茶経詳解」淡交社 79ページ)

風炉は、日本の茶道で現在も使われているものと用途が同じです。

陸羽が茶経で説いている茶器の中では中心的な存在で、

お湯を沸かすための釜の台として使われます。

銅や鉄で鋳造され、その厚みは0.9センチ(1分=約0.3センチ)、

中の空洞が1.8センチで、内側には土が塗られています。

また、上の円をなす縁どりの厚み部分は、2.7センチの幅で作ります。

鼎のように三本の足があり、それぞれ7文字ずつ、合計21文字を刻みます。

「古体の文字」とは、隷書体のことのようです。

それぞれの文字の意味は、以下の通りです。

「坎(かん)が上に、巽(そん)が下に、离(り)が中に」・・・

原文は「坎上巽下离亍中」です。

「坎」「巽」「离」は、『易経』の八卦で、それぞれ象徴的な意味があります。

これは、「あたるも八卦、あたらぬも八卦・・」の、あの八卦で、

『易経』は、いわゆる「易」としての占いの側面もありますが、

一方では、儒学の世界観をある意味合理的に説明している思想書でもあり、

陸羽も、幼少時より学んできたと伝えられています。

(陸羽というペンネームも易の卦で決められたようです。)

一般に「茶経」の精神は、儒学と仏教と道教の結合と言われることもあるのですが、

専門家の間では見解が分かれており、定見はありません。

「茶経」のテキスト上では、仏教と道教への直接の言及は皆無で、

ただ儒学への言及があり、特に『易経』からの参照が散見されます。

ここの風炉の足の文字についても、『易経』を踏まえています。

それぞれの卦の意味は、「坎」=「水」、「巽」=「風」、「离」=「火」で、

現物の茶道具の形象を象徴していると考えられます。

上中下の位置を指定しているので、その順に記すと、

上 : 「坎」=「水」釜の中の水(湯)

中 : 「离」=「火」風炉の中で火をおこす木炭

下 : 「巽」=「風」風炉の下に通る風

となります。

(参照:布目潮渢「茶経詳解」淡交社 82ページ、「中国喫茶文化史」岩波 151ページ)

「体は五行を均しくし、百疾を去る」・・・

原文は、「体均五行去百疾」です。

五行は、中国古代からある自然哲学の一つで、

木・火・土・金・水の五つを、万物を生じせしめる五元素と考えます。

風炉は、金属(金)で作られていて、釜には湯(水)がある。

燃料の木炭(木)が燃えて(火)、燃えると灰かす(土)になるので、

五行すべてが均しく備わっている。

病気は五臓から起こるが、風炉には万物の五元素があるので、

茶はどんな病気にも効果がある、という趣旨になります。

(参照:布目潮渢「茶経詳解」淡交社 82ページ)

「聖唐が胡を滅ぼした明年に鋳る」・・・

原文は、「聖唐滅胡明年鋳」、

唐が胡を滅ぼした翌年にこの風炉を鋳る、の意です。

「茶経」の中では、具体的な年代の記述がある唯一の箇所です。

胡は、北方異民族の匈奴のことで、

唐が匈奴と争ったというのは、陸羽の同時代に照らすと、

安史の乱(755年-763年)のことを指すと考えられます。

安史の乱は、玄宗治世、西域出身の節度使・安禄山らによる反乱で、

陸羽も戦乱を逃れるため、江南の地、太湖の南へ移動しています。

乱が平定されたのが763年なので、その翌年764年に、

この風炉が作られたと考えるのが通説なのですが、

布目さんは、玄宗と粛宗(756年即位)が長安に帰還した757年、

その翌年の758年に鋳造とする説を掲げています。

(参照:布目潮渢共著「中国の茶書」平凡社東洋文庫 59ページ)

ただ、年数の問題は専門的には大切だと思うのですが、

陸羽はここで、刻むべき7文字「聖唐滅胡明年鋳」を指定しているで、

実際の年度そのものよりも、その7文字にどんな意味合いがあるのか、

どうして風炉にその文字を刻まなければならないか、

安史の乱と「茶経」の精神性にはどんな関連があるのか・・

そもそもこの箇所は原文オリジナルにあるのか、後代の加筆の可能性はないか、

、、、等々を疑問に感じてしまいます。

布目さんの本を読んでも、その点はいま一つよく理解できませんでした。

機会があれば、また調べてみたいと考えています。

それでは続きは次回で。

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2017-01-17T15:18:37+00:00 February 26th, 2011|Categories: 中国茶ブログぼちぼち日記, 陸羽「茶経」 by ぼちぼち|Tags: , |

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