鉄観音

鉄観音は、福建省泉州市の内陸部・安渓県にて生産される半発酵の烏龍茶です。祥華、感徳、龍涓、長坑、剣斗、桃舟など、内安渓と呼ばれる、標高800m-1500mほどの北西部の高山地帯に良質な鉄観音の茶畑が広がっています。

鉄観音の産地

鉄観音の産地・福建省安渓鉄観音は、福建省泉州市の内陸部・安渓県にて生産される半発酵の烏龍茶で、頭に地名をつけて、安渓鉄観音(anxi tieguanyin アンシーティエクワァンイン/あんけいてつかんのん)とも言われます。
特に、内安渓と呼ばれる、標高600m-1500mほどの北西部の高山地帯に良質な茶畑が広がっています。北緯24-25度、年間の平均気温は約20℃で、降水量は1800mm前後です。また、pH3.4〜4.9ほどの酸性の赤黄色土壌で、一年を通して霧靄が多く、古くからお茶の栽培に適した環境に恵まれています。
内安渓の有名な産地としては、祥華、感徳、龍涓、長坑、剣斗、桃舟などがあり、それぞれの地域で製法、味と香りに傾向や特徴があります。2000年代前後に新たな茶畑が開墾され、山間農村と地域産業の活性化に大きく貢献しました。しかし、土壌流出や土砂崩れなど弊害もあり、現在では、乱開発防止のため新規の開拓が制限されている地域もあります。

鉄観音の歴史

安渓でお茶の生産がはじまったのは唐末-宋初とされており、安渓蓬莱山の清水岩寺にはお茶にまつわる伝承があります。時代が下り、明代になると安渓の広域で茶業が盛んになりました。現在の烏龍茶(半発酵)に繋がる製法は、明末-清初にこの安渓で開発されたと言われています。
「鉄観音」という名の由来には大きく二つの説があります。

  • 「魏説」… 1725年、安渓西坪鎮松岩村の信心深い茶農家の魏が、夢に見たとおりの場所で見つけた茶樹を育てて広げた。観音に導かれて発見したので「鉄観音」と名づけた。
  • 「王説」… 1736年、安渓西坪鎮南岩村の読書人の王が偶然見つけた珍しい茶樹を育て、翌年乾隆帝に献茶した。乾隆帝は茶を褒め、その形状が鉄のように重く、観音のように芳しいので「鉄観音」と名づけられた。

どちらも民間伝承ですが、鉄観音は、清代の1723年-1735年頃、今から300年ほど前に安渓西坪付近で生産が始まっただろうと考えられます。清朝興隆期に普及し、台湾にも製法が伝わりました。清末-20世紀前半の混乱で停滞しますが、1980年頃から日本など海外への輸出が活発になるにつれ茶業も復活し、技術革新、製法の洗練化などを経て、現在では国内外で広く愛飲されています。