茶経10 茶器 風炉その2

茶経10 茶器 風炉その2

煮茶風炉イメージ
2011年5月20日タグ: , ,

陸羽の「茶経」を読む、第10回目です。

今回は、茶器の風炉(ふろ/ふうろ)についての続きです。

該当の箇所の後半を引用いたします。

「三窓の上に、古体の文字で六字を横書きにし、一窓の上に、『伊公』の二字を書き、一窓の上に、『羹陸』の二字を書き、一窓の上に、『氏茶』の二字が書いてある。

これは『羹(あつもの)では伊公、茶では陸氏』という意味である。

炉の中に中高い小山を置き、三個の格を設け、その一格に翟(きじ)の図がある。

翟は火の禽(とり)である。离という一卦を画する。

その一格に彪(虎)の図がある。

彪は風の獣である。巽という一卦を画する。

その一格に魚の図がある。

魚は水の虫(動物)である。坎という一卦を画する。

巽は風をつかさどり、离は火をつかさどり、坎は水をつかさどる。

風はよく火をおこし、火はよく水をあたためる。

故にその三卦を備える。

風炉の飾り文様には、連ねた葩(花)、垂れた蔦、曲水、四角な文様の類がある。

その炉は或いは鉄を鍛えてつくり、或いは泥をめぐらせてつくる。

その灰承は三足の鉄盤でつくり、炉を載せる。」

(引用元:布目潮渢「茶経詳解」淡交社 79-80ページ)

風炉の横に三つの窓があり、文字が書かれています。

風炉を図示した場合、そこに左から二文字ずつを並べると「茶氏」「陸羹」「公伊」となり、そして、これを右から意味わけすると「伊公羹」「陸氏茶」となります。

「羹」は、”羹(あつもの)に懲りて膾を吹く”のことわざにある「羹」です。

中国の古代から伝わる肉入りのスープのことで、殷の時代の湯王に仕えた伊尹(いいん)が、その羹料理の名人として有名でした。

陸羽はその羹の名人と名を連ねるようにして、「羹なら伊公、お茶なら陸氏」と自ら褒め称えます。

(参照:同上 83ページ)

次に続く「中高い小山」は、原文は「しちりん」とも解釈されうる言葉で、イメージすると、鼎を逆さにしたようなものです。

三本の「格(わく)」があり、風炉をはめこむような形にして、火元の置き台として使用したのではないかと思います。

(布目さんの本は語義の解説は豊富にあるのですが、使用法が簡明に書いてなく、これはわたしの推察になります。)

そして、その三本の格にはそれぞれ図があり、その三つの図が、やはり五行の思想に裏打ちされた意味を担います。

魚(水の動物): 「坎」=「水」

雉(火の鳥): 「离」=「火」

彪(風の獣): 「巽」=「風」

(参照:同上 84-85 ページ)

このように、陸羽の茶道の中心となる茶道具の風炉は、易経の五行思想に典拠しながら、万物の要素を体現するものとして意味づけが行われています。

それは、茶を飲むということが、自然と人とのつながり、その接点の一つとして、陸羽が考えていたことの現われでもあると思います。

それでは続きは次回で。

小林

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