ジャスミン茶の歴史
ジャスミン(茉莉花)の原産は、アラビアーインドのユーラシア熱帯地域で、はじめて中国に入ってきたのは、漢代とされています。ペルシャ、インドを経由して、仏教の花として知られるようになったようです。茶に植物を用いて香りをつけるのは、一部、宋の時代の貢茶で行われていたという記述がありますが、現在のジャスミン茶につながるような製法については、さらに時代が降り、明の「本草網目」に記載されています。

しかし、ここ10年で福建でのジャスミン茶の生産は激減しています。茉莉花の畑の減少や人員不足、また、ベース茶葉の高騰、老白茶ブームなどがその理由としてあげられます。
ただ、その歴史的価値から、福州茉莉花茶は伝統工芸としてリスペクトされる傾向にあります。ジャスミン茶にも「高級品」があるという認識は、福州茉莉花茶の誕生を以ってして生まれたのは間違いありませんが、皮肉にもその認知が強まったのは、当の福州でのジャスミン茶の生産体制が弱まり、稀少になったからだとも言えます。
もちろん、すべての福州茉莉花茶が名茶師の手づくりというわけではありません。大部は機械化を導入した茶工場での生産であり、量産体制を支えるのは、なによりも先ず、豊富な茉莉花茶の生産量です。
ジャスミン茶、生産の中心は広西横県へ
その茉莉花茶の一大生産地として、福州に代わり大きな存在となったのが、広西壮族自治区南寧市の横州市(広西横県/广西横县 guangxi hengxian)です。
広西横県でのジャスミンの花の摘み取り風景


「中国茉莉花茶の故郷」広西横県、茉莉花の苗を植えて育てます。
広西横県ジャスミン(茉莉花)のつぼみ
茉莉花の摘みとりは、毎年5月から10月までがシーズンで、夏の7月-8月の季節が最盛期となります。晴れた日の正午前後から、夕方4時ごろまで摘みとりをします。そして、花市場に集められた大量のジャスミンのつぼみは、当日の夜には香りづけを行う茶工場へと運ばれます。
真夏の炎天下の摘みとりは花農家にとって辛い労働ですが、茉莉花の品質は夏の暑い時期のほうが良く、売値も上がります。この農家さんたちの努力なくして、香り高いジャスミン茶を味わうことはできません。
白龍珠から女王環へ
「良質な茶葉」
「豊富で新鮮な茉莉花」
「優れた香りづけ技術」
これが、美味しいジャスミン茶をつくるための三つの条件です。
福州茉莉花茶の技術を引き継ぎながら、現在、この三つの条件が過不足なく揃っているのが、広西横県の茉莉花茶になります。
清香花楼では、福州白龍珠王(コロコロジャスミン茶)をはじめ、福建省産のジャスミン茶を販売してきましたが、2021年は広西横県産(横県での香づけ)のジャスミン茶を仕入れました。
特に、茶葉がリング状にくるりと丸まったジャスミン茶・茉莉女王環は、福州白龍珠王と同等クラスの高級ジャスミン茶です。小ぶりの茶器で煎数を重ね、香りや味の変化を存分に堪能することができます。
また、横県茉莉花茶の日用茶葉としては、ジャスミン茶・茉莉銀毫をお勧めいたします。ベース茶葉は女王環ほど良くありませんが、こちらも横県の同工場にてしっかり丁寧に香りづけされており、本物の香りのジャスミン茶を楽しむことができます。
ちなみに、仕入れ元工場は、ISO22000やSGS認証などの国際食品規格を取得しており、茉莉花もすべて自社管理の畑で生産したものを使用しています。
茉莉花 – 人间第一香
中国では、ジャスミンの花の香りを讃えるのに、本の扉や商品パッケージなどで、しばしば引用される古詩があります。
灵种传闻出越裳,何人提挈上蛮航。
他年我若修花史,列作人间第一香。
— 宋代 江奎《茉莉花》 其一
大意としては「茉莉花は南の国から来たらしいが、一体誰が持ち運んだのだろう。いつか私が花の史書を書き換えることがあるなら、茉莉花こそ、この世で一番の香りと記したい。」といったあたりでしょうか。
アロマとしても楽しめるジャスミン茶。
茶器の蓋やカップの残り香をそっと嗅いでみてください。鼻腔から脳へと、深く、華やかなジャスミンの香りがすうっと広がるはずです。
横県茉莉花茶で、ぜひ自分だけの癒し時間をお過ごしください。
小林
小林
過去のブログ記事
最近のブログ記事
丽日茶記リーリーチャージーより



















